読み聞かせで子どもの好奇心を刺激する対話術:物語を深める声かけと質問のコツ
読み聞かせは、子どもとの大切なコミュニケーションの時間です。物語の世界を共有する中で、子どもの想像力や言葉の力を育むだけでなく、親子の絆を深める貴重な機会となります。
しかし、時には「子どもが途中で飽きてしまう」「どうすればもっと読み聞かせを楽しんでくれるか分からない」といったお悩みを抱えることもあるかもしれません。そのような時、通常の読み聞かせに「対話」の要素を少し加えるだけで、読み聞かせの時間は大きく変化し、子どもの好奇心と物語への没入感をさらに深めることができます。
この記事では、読み聞かせの時間をより豊かで有意義なものにする「対話型読み聞かせ」の具体的な声かけと質問のコツ、そして実践例をご紹介します。
対話型読み聞かせがもたらす豊かな価値
対話型読み聞かせとは、単に物語を読み上げるだけでなく、絵本の内容について子どもとコミュニケーションを取りながら進める読み聞かせの方法です。子どもが物語の「聞き手」から「参加者」へと変化することで、以下のような効果が期待できます。
- 好奇心と想像力の刺激: 物語の先を予想したり、登場人物の気持ちを考えたりすることで、子どもの内なる好奇心が刺激され、想像力が豊かになります。
- 語彙力と表現力の向上: 自分の考えや感じたことを言葉にする機会が増え、自然と語彙力や表現力が育まれます。
- 共感力と社会性の発達: 登場人物の感情に触れることで、他者の気持ちを理解しようとする共感力が養われます。
- 親子の絆の深化: 共通の話題で対話することで、お互いの理解が深まり、親子の間に豊かな信頼関係が築かれます。
実践!好奇心を刺激する声かけと質問のコツ
対話型読み聞かせは、特別な準備や技術を必要としません。普段の読み聞かせに少しの工夫を加えるだけで、すぐに実践できます。
1. 物語が始まる前に:興味の種をまく声かけ
絵本を開く前に、表紙やタイトルを見ながら、これから始まる物語への期待感を高める声かけをしてみましょう。
- 「この絵本、どんなお話だと思う?」
- 「表紙に〇〇が描かれているね。どんなことをしているのかな?」
- 「このタイトルの『〇〇』って、どんな意味だと思う?」
このように問いかけることで、子どもは物語が始まる前から積極的に思考を巡らせ始めます。
2. 物語の途中で:心を揺さぶる問いかけ
物語を読み進める中で、子どもの興味や想像力を刺激する質問を適度なタイミングで挟むことが重要です。
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場面や登場人物の感情に寄り添う声かけ:
- 「〇〇ちゃんは、このときどんな気持ちだったと思う?」
- 「もし〇〇くん(ちゃん)だったら、どうする?」
- 「この顔、悲しいのかな、嬉しいのかな?」
- ポイント: 子どもが他者の感情を想像し、共感する力を育みます。自分を物語の登場人物に重ね合わせることで、物語への没入感も深まります。
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次に何が起こるか予想させる声かけ:
- 「次に何が起こるかな?」「この後、どうなると思う?」
- 「〇〇はどこへ行くんだろうね?」
- ポイント: 物語の展開に積極的に関わろうとする意欲を引き出し、論理的思考力の基礎を養います。
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絵の細部や背景に目を向けさせる声かけ:
- 「この絵の中に、何か隠れているものはないかな?」
- 「〇〇の周りには、どんなものが描かれている?」
- 「このお家は、どこにあるんだろうね?どんな人が住んでいるのかな?」
- ポイント: 観察力を高め、細部から物語の世界を広げる想像力を刺激します。
3. 子どもの反応への丁寧な向き合い方
子どもが問いかけに対して答えた時、どのように反応するかが対話型読み聞かせを成功させる鍵です。
- どんな答えでも肯定的に受け止める:
- 子どもが期待とは違う答えを言ったり、物語と関係ないことを話し始めたりしても、「そう思ったんだね」「面白い考えだね」と、まずはその発言を肯定的に受け止めましょう。
- 「間違っている」という表現は避けてください。子どもの自由な発想を大切にする姿勢が、自己肯定感を育みます。
- 子どもの言葉を繰り返したり、深掘りしたりする:
- 「〇〇って思ったんだね。どうしてそう思ったの?」
- 「なるほど、〇〇が△△すると思ったんだね」
- このように、子どもの言葉を繰り返したり、さらに質問を重ねたりすることで、子どもの考えを尊重し、思考を深める手助けができます。
- 答えが出ない場合は焦らない:
- 子どもがすぐに答えられない、あるいは答えが出ないこともあります。その場合は、無理に答えを促さず、「そうだね、ゆっくり考えてみようか」「まだ分からないかな?じゃあ、もう少し読んでみようね」と優しく声をかけ、読み進めても構いません。
- 対話は強制するものではなく、子どものペースに合わせることが大切です。
具体的な絵本での実践例
いくつか具体的な絵本を例に、対話型読み聞かせの声かけ例を見てみましょう。
『ぐりとぐら』(福音館書店)での例
- 場面:大きなカステラを見つけるシーン
- 「うわぁ、こんなに大きなカステラ、見たことある?」「どんな味がするんだろうね?」
- 「誰がこのカステラを作るのに手伝ってくれたのかな?」「これから誰が食べに来ると思う?」
『おおきなかぶ』(福音館書店)での例
- 場面:おじいさんがカブを抜こうとするが抜けないシーン
- 「おじいさんは、どうしてカブを抜きたいのかな?」
- 「こんなに大きなカブ、一人で抜けるかな?」「誰を呼んだら抜けると思う?」
これらの例はあくまで一例です。絵本の内容や、その時の子どもの反応に合わせて、自由に声かけや質問をしてみてください。
まとめ
読み聞かせに「対話」の要素を取り入れることは、子どもにとって物語をより深く体験する機会となり、その好奇心や想像力を大きく育むことにつながります。そして何より、保護者の皆様と子どもが心を分かち合い、豊かなコミュニケーションを育む大切な時間となるでしょう。
完璧な対話を目指す必要はありません。まずは、絵本の表紙について少し話してみたり、物語の途中で「これ、どうなるかな?」と問いかけてみたりと、手軽な声かけから始めてみてはいかがでしょうか。子どもの自由な発想や反応を楽しみながら、読み聞かせの時間をさらに実りあるものにしてください。